相続税が課税される基準になる相続税課税額の求め方

相続税課税額の計算

相続税が課税されるかどうかは、相続税の税率が高いだけに多くの人にとって相続の最大の関心事です。相続税が課税されると分かれば節税対策が必要ですが、相続が発生してからの節税対策では効果的な節税を行うことはできません。そのため、相続税が課税されるかどうかを早めに知ることは非常に重要です。しかし、相続財産の種類は多く、課税される財産かどうかの判断や、相続財産の評価額が分からない財産があります。そこで、相続税がいくらになるかが決まる相続税課税額の求め方について解説します。


相続税の課税が決まる相続財産の評価額を知ることの難しさ

相続財産には預貯金や株式など相続財産の評価額が分かりやすいものもありますが、不動産など評価額が分かりにくい財産もあります。また、同じ不動産でも自宅の土地とアパートなどが建築されている土地では評価額が異なります。また、相続税の対象にならない財産や、民法上では相続財産ではない財産が税法上は相続財産になる財産、あるいは相続財産から控除できるマイナスの財産もあります。しっかりした知識がないと相続税が課税される基準になる相続税課税額を知ることは困難です。その結果、相続税が課税されるか、課税されるとしたらどの程度の相続税対策を行えばよいか分かりません。また、対策が遅れて節税ができなくなる可能性があります。


相続税課税額を知るためのステップ

ステップ1 すべての相続財産の洗い出し

ステップ2 みなし相続財産の確認

ステップ3 相続時精算課税制度の利用の確認

ステップ4 名義預金などや被相続人の口座から直前に引き出された現金の確認

ステップ5 非課税相続財産の確認

ステップ6 相続財産から控除できる債務の確認

相続税課税価額


それぞれのステップについて詳しく解説します。

ステップ1 すべての相続財産の洗い出し

金銭に換算できる財産はすべて相続財産です。以下のような財産があり「本来の相続財産」と呼ばれます。

具体的には、土地、建物、土地の上の権利(借地権、地上権など)、預貯金、有価証券(株、社債など)、家庭・事業用動産(車、貴金属、会員権、書画・骨とう品、機械器具、備品など)、債券(貸付金、売掛金、未収入金など)、知的財産(特許権、著作権など)などの財産です。相続財産になる財産とならない財産については「みなし相続財産や課税されない財産」などこちらでも詳しく解説しています。③

ステップ2 みなし相続財産の確認

相続税は、被相続人が亡くなったときに所有していた財産に対して課税されます。被相続人の死亡時の財産ではありませんが、実質的に死亡時の財産とされるのが「みなし相続財産」です。

「みなし相続財産」には、以下のようなものがあります。

  1. 生命保険金
    ただし、被相続者が保険料を支払い、受取人が指定されていなかった場合で、その生命保険金を受け取った者が被相続人の財産を相続した場合に「みなし相続財産」とみなされます。そのため、受取人が指定されていた場合は、その受取人が相続人であっても、「みなし財産」にはなりません。また、生命保険の受取人が被相続人の相続財産を相続しなければ「みなし相続財産」になりません。
  2. 死亡退職金
    ただし、死亡後3年以内に支払われた死亡退職金のみが「みなし相続財産」で、3年を経過して支払われた死亡退職金は除かれます。
  3. 弔慰金
    弔慰金は、葬祭料などとともに一般的には相続税は課税されません、しかし、被相続人の雇用主などから弔慰金などの名目で受け取った金銭などのうち、実質上退職手当金などに該当すると認められる部分は「みなし相続財産」です。その場合、みなし相続財産になるのは全額ではなく被相続人の死亡が業務上の死亡であるときは、被相続人が死亡当時に得ていた普通給与の3年分に相当する額、被相続人の死亡が業務上の死亡でないときは、被相続人が死亡当時に得ていた普通給与の半年分に相当する額をこえた部分のみです。
  4. 被相続人の死亡した日の3年前以内に贈与された財産
    死亡した3年前以内に受け取った財産は、相続逃れとみなされて、「みなし相続財産」として課税されます。「みなし相続財産」についてはこちらで詳しく解説しています。③-2

ステップ3 相続時精算課税制度の利用の確認

相続税は、被相続人が亡くなったときに所有していた財産に対して課税されますが、相続時精算課税制度を利用した贈与財産は被相続人の死亡時の財産ではありませんが、実質的に死亡時の財産として相続税が課税されます。

相続時精算課税制度とは、一定の条件のもとで被相続人の相続財産を生前に子どもまたは孫に引き継ぎ、相続財産の有効活用や消費の拡大を目的に贈与時の贈与税を通常よりも大幅に軽減される制度です。通常の贈与の非課税枠は、贈与を受ける人ごとに年間110万円ですが、相続時精算課税制度では贈与をする人ごとに生涯にわたって累計2,500万円まで非課税です。また、非課税枠をこえた金額に対して、通常は(贈与された価額-110万円)×累進税率ですが、相続時精算課税制度では、(贈与された価額-2,500万円)×20%で一律です。

このように贈与時に優遇されますが、相続時精算課税度で贈与した財産は被相続人が亡くなったときに相続財産に加えて相続税が課税されます。贈与時に贈与税を納税していれば、相続税から控除できます。そのため、相続時精算課税度は「納税の先送り」あるいは「相続財産を生前に贈与税を気にしないで先渡しができる」制度といえます。相続時精算課税制度についてはこちらで詳しく解説しています。③-4

ステップ4 名義預金などや被相続人の口座から直前に引き出された現金の確認

名義預金とは、実質的に銀行口座に預金している人と、その銀行口座の開設している人が異なっている預金のことです。形式的には名義が異なるので被相続人の財産ではありませんが、税法では実質的に被相続人の財産であれば相続財産に加えられます。預金以外にも、株式や公社債、投資信託なども実質的に資金を運用している人と株式などの名義人が異なっていても名義預金と同様に相続財産として課税されます。また、相続財産を少なくして相続税を逃れるために被相続人の銀行口座から直前に引き出された現金も相続財産として課税されます。

ステップ5 非課税相続財産の確認

換金できる財産のなかに相続税が課税されない以下のような財産があります。これらの財産は除きます。

  • 墓地、墓石、仏壇、仏具、神具など(骨とう価値、投資価値のあるものは課税対象財産になる場合があります)。
  • 公益が目的の事業を行うための財産で公益目的の事業に使われることが確実な財産。
  • 地方公共団体の条例によって、障害者を扶養する人が心身障害者共済制度に基づいて支給される給付金を受ける権利。
  • 受け取った生命保険金・死亡退職金のうち500万円に法定相続人の数を掛けた金額。
  • 個人で経営している幼稚園の事業に使われていた財産。ただし、一定の要件を満たし、相続人のいずれかが引き続きその幼稚園を経営することが必要です。
  • 相続税の申告期限までに国や地方公共団体や公益を目的とする事業を行う特定の法人に寄附する財産、あるいは相続税の申告期限までに特定の公益信託の信託財産とするために支出した金銭。

ステップ6 相続財産から控除できる債務の確認

相続財産には、借金や税金の未納金などの債務も含まれます。これらのマイナスの財産はプラスの財産から控除できます。連帯保証債務なども相続財産となり控除できる財産として認められる場合があります。被相続人が事業を行っている多くの借金や買掛金、支払手形などの債務があるのでしっかり調査することが必要です。

また、葬式費用も相続財産から控除できます。ただし、香典返しの費用や墓地、墓石の購入費用、初七日などの法事費用は控除できません。被相続人が亡くなる前に購入した非課税財産の墓地、墓石を購入し未払いのまま亡くなると、この未払い金は控除できないマイナスの財産となるので注意が必要です。


相続税の計算から控除できる金額

相続税を計算するには、上記で算出した相続税課税価額から相続する法定相続人数に応じた基礎控除額を計算して、その金額を相続税課税価額から控除できます。相続税課税価額から基礎控除を控除した金額は課税遺産総額と呼ばれます。相続税は、この課税遺産総額に対して課税されます。

税遺産総額=相続税課税価額-基礎控除額

基礎控除額は法定相続人に人数によって異なり、「3,000万円+600万円×法定相続人の人数」で計算できます。法定相続人数の数え方についてはこちらで詳しく解説しています。⑥


相続財産の評価方法

相続税の計算は、上述のステップを踏むことで相続財産の価値がいくらか現金や預貯金のように簡単にはっきり分かる場合、相続税額は簡単に計算できます。しかし、相続財産のなかには現金や預貯金と違って、評価額が簡単に分からない財産が多くあります。財産別に評価額はどのようにすれば分かるかについて説明します。

相続税は、原則被相続人が亡くなった日の時価で相続財産を評価し課税されます。時価では、不動産、株式、骨とう品などの財産は、評価するときの評価方法で大きく財産価値が変わり相続税も変動します。そこで、国税庁は、一定の評価ルールを個別の土地、建物、株式など財産別に「財産評価基本通達」で公表しています。同じ土地でも、住んでいた土地、借家が建っている土地、駐車場になっている土地、農地、広大な土地などに分類して評価方法を定めています。

国税庁の定めている財産の評価方法で財産額の評価額を知るには、評価方法が複雑で専門家に依頼しないと困難です。しかし、事前に相続税が課税されるのか、課税されるとしたらどれくらいになるのかを知ることは相続税対策に必要です。まず、概算でどれくらいになるかは把握しておくことをおすすめします。おおよその評価額を知るための財産別の評価方法は以下の表の通りです。

財産評価額の概算を知るための方法・評価基準
預貯金(定期預金)解約手取り額
宅地(自用地)売買の実勢価格の約80%
貸し宅地宅地(自用地)の評価額の30%~40%
家屋家屋の固定資産税評価額
貸し家屋家屋の固定資産税評価額の約70%
上場株式売却手取り額
ゴルフ会員権売買時価の約70%
宝石・貴金属売却手手取り額%
公社債売却手手取り額%
貸付信託・投資信託売却手手取り額%

国税庁が発表している2014年度の相続税の財産種類別で内訳では、土地が41%、現金・預貯金が27%、有価証券が約15%、家屋が5%です。

相続財産で大きなウェイトを占める土地に関しては、相続税のなかでも重要な相続税の軽減特例があります。それは、「小規模宅地等の特例」です。この特例は、被相続人が住んでいた土地や事業をしていた土地が、一定の要件を満たすと、50%または80%まで評価額を減額される特例です。この特例によって相続税が課税されない可能性がでてきます。また、土地に関しては、他人に貸した場合、土地の形状(細長い土地、間口が狭い土地、三角地やL字状土地など)や状態(私道、広大な土地、農地など)によって評価額が軽減されます。土地が主な財産で多い場合は詳しく専門家に依頼して評価額を見積もった方がよいでしょう。「小規模宅地等の特例」についてはことらで詳しく解説します。⑦-1また、不動産(土地・家屋)と有価証券についての評価方法についてはこちらで詳しく解説しています。⑦-2

また、相続人が配偶者の場合は、相続税の大幅な軽減制度である「配偶者の税額の軽減」が利用できます。「配偶者の税額の軽減」制度についてはこちらで詳しく解説しています。⑧


まとめ

相続税が気になっても、かんたんに相続税がどの程度課税されるかは簡単に把握できません。そこで、相続税が課税される基準となる相続税課税額と課税遺産総額をどのようにして計算するのか、および評価が簡単にできない相続財産の評価額をおおまかにわかる方法・評価基準について解説しました。相続税の節税対策は、生前から計画を立ててできるだけ早く行うことで効果的に大幅な節税ができます。そのためにも相続税が課税されるかどうか、課税されるならいくら課税されるかを知ることが重要です。簡単ではではありませんが、専門家に相談することで早く的確に知ることが可能です。会計事務所スタートラインは親切&丁寧、そしてスピーディな対応ができます。

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